これまでの国の施策と動向

国による医学部定員増・将来の医師需給推計

  • 国では、平成20年度から医学部入学定員を増やし、現在9,262人(平成28年度(2016年度)現在)
  • 国の医療従事者の需給に関する検討会では、平成28年度の定員を維持する前提で医師の需給試算し、中位推計では2024年頃需給が均衡すると推計

出典: 医療従事者の需給に関する検討会 資料

奨学金養成医師の定着に向けた取組

これまでの国における医師確保対策

  • 都道府県による「地域医療支援センター」の設置
    医師の偏在の是正のため、「地域医療支援センター」が次の取組を実施する機能を医療法に位置付け
    • 医師が自ら医師不足地域で勤務することを希望する医師に対するキャリアアップの支援
    • 医師の地域偏在・診療科偏在の解消の取組
  • 都道府県による医師確保に必要な協力の要請
    都道府県知事が、特定機能病院等の開設者等に対して医師派遣の要請等を行うことができることを医療法上、明確化
  • 特定機能病院等に対する医師確保に必要な協力の要請
    医師確保の取組の実効性をもたせるため、特定機能病院、地域医療支援病院及び大学その他の医療従事者の養成に関係する機関等は都道府県の施策に協力するよう努めなければならない
日本全体という視点に欠けていた…

奨学金養成医師の定着に向けた取組

  • 医学部入学定員の増
    →西高東低の状況は変わらず、都道府県間で医師が偏在
  • しかも、これまでの国の社会保障制度改革における「医師確保対策」の方向性は、都道府県ごとの取組に止まっていた

各都道府県では、奨学金制度のほか、医師の勤務環境改善、キャリア形成支援、女性医師の離職防止・復職支援、訴訟リスクに対する支援体制の整備、ドクターバンク事業、医療クラークの配置など、様々な取組を実施

医師の地域偏在根本的解消するには
全国レベルでの施策が必要

都道府県ごとの取組のみならず、医師の地域偏在の解消に向けた全国レベルでの施策を速やかに実施する必要

平成27年6月
「保健医療2035」

要約

医師の偏在等が続く場合、医師のキャリアプランを踏まえつつ、地域住民のニーズに応じて、地域や診療科の偏在の是正のための資源の適正配置を行うことも必要となる

具体策

  • 保険医の配置定数の設定
  • 自由開業・自由標榜の見直し

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/hokeniryou2035/

平成28年6月
「医師需給分科会」中間とりまとめ

要約

医師が勤務地や診療科を自由に選択するという自主性を尊重した対策だけでなく、一定の規制を含めた対策を行っていく観点から次の事項について実施に当たっての課題、法制的な課題、関係者の意見等を踏まえ、年末に向けて具体的に検討を進め、取りまとめを行うこととする。

→本来は平成28年中に法制化に向けたとりまとめを予定

具体策の例

  • 十分ある診療科の診療所の開設については、保険医の配置・定数の設定や、自由開業・自由標榜の見直しを含めて検討
  • 特定地域・診療科で一期間に従事することを、臨床研修病院、地域医療支援病院、診療所等の管理者の要件とすることを検討

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=318654

平成28年10月
いわゆる「ビジョン検討会」発足

厚生労働大臣の主導で「新たな医療のあり方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(以下「ビジョン検討会」)が発足し、医師偏在対策の具体の検討が中断された。
その後、平成29年3月にビジョン検討会が本件報告書をとりまとめ、公表した。

平成29年4月
「ビジョン検討会」報告書公表

  • (1)少子高齢化等による医療需要の変化、医師の過重労働や女性・高齢医師の増加、ICT等の技術の進歩などを踏まえ、医療のあり方や医療従事者の働き方を見直す必要がある。
  • (2)具体的には、医療従事者の能力・意欲を最大限発揮できるような環境整備や、ICTの活用等で生産性を高めること、医師から看護師等へのタスクシフティング(権限・業務の委譲)などを進めるべきである。

医療従事者の負担軽減や医療の質の向上につながる提言として、課題認識や方向性は、一定程度評価できる
一方で、「医師数を増やす必要が無い」との結論ありきの側面も

  • (3)医師の「働き方実態調査」の結果、(条件が合えば)地方勤務の意思ありとの回答が44%となったことから、地域において医師が自発的に地方で勤務するための努力を最大化することなく、規制的手段で誘導すべきではない
  • 地域医療の実態や現場感覚と、かけ離れているのでは?
  • 調査の回収率が15.6%と低いことや、選択肢の偏り等を踏まえると、施策決定の根拠とすることには限界があるのでは?

医療従事者の受給に関する検討会・医師需給分科会

平成29年4月に検討を再開し、医師偏在対策について議論。
12月に「第2次中間取りまとめ」を公表。

「第2次中間取りまとめ」における【具体的な医師偏在対策の主な内容】

  • 都道府県における医師確保計画の策定(医療計画の一部)
    ※地域の医師の多寡を全国ベースで客観的に比較・評価可能な医師偏在の度合いを示す指標を設定
  • 知事が大学に地域枠の設定増員を要請できる制度の創設
  • 新専門医制度によって医師偏在が助長されないよう、国や都道府県が法的根拠に基づいて日本専門医機構等に要請や意見ができる旨を法定
  • 医師の少ない地域での勤務を促す環境整備・インセンティブ
    医師少数区域等での勤務経験を認定し、認定医師を一定の医療機関の管理者として評価する等の制度を創設
日本全体で地域医療を守るという視点が不足しているのではないか

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